3日前、一般曹候補生に繰り上げ合格した人が事務所に顔を出してくれました。
昨年の採用試験の感想を聞いたところ、
「とにかく5月の試験に振り回されました」
と言っていました。
工業高校を卒業して大学に通っていた彼は、自分の学力を考え、一般曹候補生を第一志望に受験準備に入ろうとしていました。
そんな折、昨年3月に行われた自衛官採用試験の説明会に参加したそうです。
その説明会では
「一般曹候補生の試験は9月にあります」
とだけ言われたそうです。
日々の生活費は勿論、大学の学費も自分で工面している苦学生の彼は、「9月に試験があるなら、5月の幹部候補生の試験が終わった頃から学科試験の対策を始めよう」と思ったそうです。
それが4月になった途端、「○○君、今年は5月にも一般曹候補生の試験があるよ」と手のひらを返したように言われたそうです。
つい10日ほど前の説明会では「9月に試験があります」とだけ言われていたのに、突然「来月にも試験があるから」と言われたそうです。
準備不足・情報不足のまま、5月の試験を受けたものの、あえなく撃沈。
家庭の事情で就職浪人だけはできない彼は、そこからネット上でいろんな情報をかき集め、YSTに通うことになりました。
因みに彼のお住まいは、お隣の福島県。
仙台の大学に通い卒論の作業をこなしながら、毎日アルバイトもして、YSTに通ってきてくれました。
なんとか対策を終え、9月の試験を迎えることになりました。
1次を順調に合格し、2次を受験。
私の肌感覚からすれば、2次も合格するだろうと思っていました。
少なくとも前年の最終合格者よりは学科試験はできていました。
ところが・・・
合格発表の日に、彼から「補欠合格でした」との報が入ったんです。
「えっ、あの学力で落ちるの?」
勿論、2次試験は面接などがありますので、総合的に合否が判断されることになりますが、それでも大丈夫だろうと私は思っていたんです。
以前、このコラムでも書きましたが、陸上の場合、都道府県によっては5月の試験で定員の半分以上の合格者(入隊予定者)を出していたところもあります。
そのため、結果として9月の試験の合否基準が上がってしまったということでしょう。
平成21年から23年の3年間、この時期にも5月に一般曹候補生の試験がありました。
当時は、9月に受験をする高3生のことも考慮して5月と9月の採用枠は「15:85」ぐらいに設定されていたようです。
ところが昨年は、地域によっては、5月の方が採用人数が多いところも出てきています。
自衛官採用試験は「就職試験」ですので、学科試験がメインではありません。
別の言い方をすれば、「学科」も見るけど、「やる気」も見ますし、「人物評価」もします。
これらを総合的に判断していくというのが就職試験です。
とはいうものの、1次試験に学科試験がある以上、まずは第1関門の学科試験に是が非でも受からないといけないんです。
景気がいいことと、少子化の影響もあり、今はどの企業でも人手不足が問題になっています。
自衛隊も例外ではありません。
そのため、5月にも受験機会を設けることで、よりよい人材を求めようという姿勢がうかがえます。
その半面、採用枠が5月と9月で2分されることになってしまったのが、昨年の一般曹候補生の試験でした。
辞退者もいるとはいえ、合否基準は明らかに前年までとは違っています。
これから数年は、合否基準が高く推移すると思って学科試験の対策をとっておいた方がいいでしょう。
最後に、冒頭の彼に今年の採用試験を受ける人たちに、何かアドバイスがありますか、と聞いたところ、次のようなコメントを頂戴しました。
「皆さん、やる気と体力は問題ないと思います。とにかく、採用人数が実質半減しているような状況ですから、1次では1点でも多く点数が取れるように頑張って下さい」