ある年の3月のことでした。
その年のYSTの自衛隊コースが開講して1週間ほどが経っていました。
1人の男性が私の事務所を訪ねて来ました。娘さん(Kさん)が自衛官を希望していて、3月初めから地元の大手の公務員専門学校に通わせ始めたとのこと。Kさんはその春、高校を卒業したばかり。いわゆる一浪生です。自衛官になることを希望し、どこに通うべきか、学校選びをしていました。その際、その専門学校で次のように言われたそうです。
「うちは、公務員養成のための学校だから、一通りカリキュラムをこなせば、当然、自衛隊にも対応できますよ。」
Kさんはその言葉を信じて入校しました。しかし、通い初めて10日も経たないうちに違和感を覚えた そうです。
自衛官採用試験の過去問を見たことのある人なら、お分かりいただけるのですが、いわゆる一般の公務員(国家Ⅲ種/市役所/警察官/消防など)と自衛隊の試験は、内容が全く異なります。一般の公務員では、試験科目は基本的に、五教科(国・社・数・理・英)+α。レベルは高校2年生程度まで。一方、あなたが希望している自衛官の場合、科目は3教科(国・数・英)。レベルは高校1年生程度(自衛官候補生は国・数・社、レベルは中卒程度)。
確かに、一般の公務員の勉強をしていれば、自ずと自衛官の試験の対策にもなるのですが、自衛官を本当の第1志望にしている人からすれば、あまりにも無駄が多すぎるんです。 勿論、他の公務員も視野に入れつつ、自衛官の勉強もすることに、私は異を唱えるつもりはありません。将来の選択肢は多いにこしたことはないわけですから。
でも、冷静になって考えて下さい。一般の公務員の場合、国家Ⅲ種で倍率が20~60倍。市役所は地域にもよりますが、50倍なんていうのがざらです。自衛官だって、10~30倍はしてるんです。「二股」かけて勉強しようというのは、いかがなものかと私は思います。倍率を考えれば、そんなに甘いものではないんです。
勿論、両方とも受かる人もいます。でも、それは本当に「氷山の一角」。
本当に自衛官になることを望んでいるのであれば、私なら迷わず
「自衛官に絞った勉強をした方がいいですよ」
とアドバイスします。
ここまで読んで不安に駆られた読者には、魔法の言葉を伝授しましょう。スクールを見学に行ったときに「テキストを見せて下さい」、「カリキュラム/時間割を見せて下さい」と質問するだけでいいんです。自衛官採用試験対策として、本当に自信のあるスクールであれば、胸を張って見せてくれるはずです。そして、納得をして、そのスクールに通えばいいんです。
でも、「公務員の講座を一通りやっていれば、十分に自衛官にも対応できますよ」という返事が返ってきたら、迷う必要はありません。
「ああ、このスクールは自衛官の対策は何にもやっていないんだな。私を入校させようとしてるのは、単なるお金目当てなんだな」と判断して下さい。
後日談です。Kさんは翌日からYSTに通い始めました。11月には、見事、一般曹候補学生と曹候補士の最終合格を勝ち取りました。
当塾は、平成5年から自衛官採用試験専門の受験指導を行って参りました。小さなスクールではありますが、ひたむきに自衛官を目指す皆さんとともに、歩んで参りました。
スクール選びで納得がいかなかった方は、是非、お気軽にご相談下さい。あなたに合った、最適の勉強法を一緒に探していきましょう。