かつて、一般曹候補学生という制度がありました。
現行の「一般曹候補生」は、簡単に言えば一昔前の「曹候補士」と「一般曹候補学生」が1つになったようなものです。
レベル的には「一般曹候補学生」の方が「曹候補士」よりも上と思っていいでしょう。
手元に2000年の資料があるのですが、一般曹候補学生だと女性の採用人数が、陸・海・空合わせて70名しかいませんでした。
因みに現行の一般曹候補生(女性)の場合、
☆陸上=270名
☆海上=200名
となっております。
(航空は男女の区別なく採用)
一般曹候補学生のおおよそのレベルというか、入りにくさが分かると思います。
当時の一般曹候補学生は、陸・海・空合わせて、現行・陸上女子のわずか4分の1しか合格できなかったんですね。
それだけ極めて厳しい採用試験でした。
陸・海・空合わせて70名。
単純計算をすれば、
1つの都道府県から約1.5人しか合格できません。
今から20年前。自衛官採用試験の指導を始めてまだ間もなかった私は、手探り状態で受験指導をしていました。
パソコンを含む家電製品の2000年問題が終わり、インターネットがようやく家庭に普及し始めた頃の話です。
前年には、何とか当YSTからも女性の曹候補士合格者第1号が誕生していました!
これで女性の曹候補士のレベルがどの位か、何をどのように勉強すればいいのかが、経験として身につきました。
当時のことは、今でも昨日のことのように覚えています。
噂というのはすごいもので、
「あそこの塾から女性の曹候補士の合格者が出たんだってよ」
ということをどこからか聞きつけた1人の女の子が私の事務所を訪れました。
高校を卒業したばかり。それも、お隣の山形県在住とのこと。
いろいろ話をしていくと「一般曹候補学生(陸上)が第1希望」ということでした。
ということで、彼女(Tさん)は片道2時間、電車にゆられて、当YSTに通うことになりました。
前年に曹候補士の女性の合格者が出たことで、曹候補士については、指導をしていく自信がありました。
でも、女性の一般曹候補学生に関しては私としては未知の領域でした。
そのため、私はまずは情報を集めることにしました。
最寄りの募集事務所に問い合わせたり、インターネットでいろんな掲示板を調べまくりました。
その時たどり着いた結論は、
女性で一般曹候補学生に合格するレベルというのは、
「雲の上の存在」だ
ということです。
ある掲示板には、
「現実的には、各都道府県から一名程度しか合格しないので、合格者というのは、いわばその都道府県の代表者に相当します」
なんてことが書いてあります。
今だから言えるのですが、その掲示板は、関東地方のある広報官が運営していたものでした。
当時はこんなことをやっていてもお咎めなかったんですね(笑)。
話を元に戻しましょう。
「合格者=都道府県の代表者」
この図式に、指導する立場にありながら、私ははっきり言って面食らってしまいました。
悪いことは重なるもので、Tさんの6月の模擬テストの結果(一般曹候補学生)は、45点満点中21点。
これでは、一般曹候補学生はおろか、曹候補士さえも危うい状況です。
それでも、片道2時間もかけて勉強をしにきているTさんのため、私はできることをやろうと心に決め、授業を進めていきました。
模擬テストを作成するにあたり、問題をデータベース化していたので、出題頻度の高い問題、どれくらいのレベルまでやればいいのかについては、客観的に分かっていました。
とにかく日々の授業では、このデータに基づいて問題を提供するよう心掛けました。
TさんはTさんで、模擬テストの結果にめげることもなく、強(したた)かに勉強を続けました。
夏休みには実戦問題集(一般曹候補学生用)に集中して取り組んでもらいました。
結果は・・・
一般曹候補学生・曹候補士とも最終合格!
Tさんは合格発表の日、その結果が信じられないといった様子で電話をよこして来ました。
一方の私は、彼女の報を受け、ようやく肩の荷が下りました。
実は同じ年、夏期講習受講生からも一般曹候補学生の最終合格者(女性:Mさん)が誕生しています。
更に、県外の模試受講生・教材購入者からも、判明分だけで3名の合格者が出ていました!
その時、私はあることに気が付きました。
それは、
一般曹候補学生(女子)に合格するレベルが「雲の上の存在」だと思ったのは、間違いだった
ということです。
まして、
「都道府県の代表者」のレベルに達しなければいけないというのもウソだ
と気が付きました。
一体どういうことなのか?
この謎を解く鍵は2つあります。
1つ目は、倍率の高さ・採用枠の少なさに受験をする前からビビってしまっているということ。
実は準備さえしっかりしておけば、誰でも一般曹候補学生(女子)に合格することは可能です。
それなのに、受験勉強をする前から倍率などの数字に面食らってしまって、戦意喪失状態になってしまう。
これでは入隊へのキップを勝ち取ることはできません。
そして
2つ目は、ツボをおさえた勉強をすればいいということ。
当YSTから受験情報を得ている人は別ですが、それ以外の志願者は、やっぱり何をどう勉強していいのか分からないわけです。
多くの場合、市販の問題集を買ってきて勉強を始めるのですが、これが食わせ者。
全く最近の出題傾向に合っていないんです(笑)。
そんなこととは知らずに彼女たちは黙々と勉強を続けます。
つまり、彼女たちがその問題集を用いて勉強をすればするほど、実際の試験問題からどんどんかけ離れて行くんです。
そういう人たちの中から合格者が出るとすれば、それはやっぱり「雲の上の存在」のレベルの学力を持っている人だと私は思います。
Tさん・Mさんの学力は決して「雲の上の存在」のレベルではありませんでした。
どこにでもいる、ごく普通の女の子です。
しかし、2人とも努力家でした。コツコツと努力を積み重ねていくタイプです。
また、「絶対に自衛官になりたい」という強い意志を持ち合わせていました。
それから、分からないことは納得するまで質問をしてきました。
内容は勉強に限りません。倍率や普段の勉強方法、作文の内容、面接。
とにかく疑問に思ったことは何でも聞いてきました。
私が思うに、納得をすることで勉強に専念できる環境を作っていたのでしょう。
一般曹候補学生に受かるためには、別に「雲の上の存在」になる必要はありませんでした。
出題頻度の高い問題・出題されるレベルに見合った学習事項をしっかりと身につければいいだけだったんです。
ただそれだけだったんです。
それと倍率は気にしないこと。
だって、受験生の多くは、最近の傾向には全く合っていない問題集をやっているんですから。
彼女たちは、実は「敵」ではありません。倍率を上げるためにいる人たちだと思えばいいんです。
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現行の一般曹候補生(女性)は、以前の一般曹候補学生の10倍以上の採用枠があります。
昔に比べれば楽になったものです。私はそう思います。
適切な問題集・対策をコツコツこなしていけば、必ず、最終合格を勝ち取ることができます。
自分を信じること。絶対に合格するんだという強い意志を持つこと。
倍率など気にせず、やるべきことをやる。
ありきたりな言い方ですが、これがベストな対策と言えます。
5月・9月の採用試験目指して頑張っていきましょう!